ブッダ 最期のことば

ぶらっと本屋に寄った際、こんなテキストを見つけてびっくり。
NHK(Eテレ)でこんな講座をやっていたんですね。
しかも講師は注目していた「佐々木閑(ささき・しずか)」氏。
京大の工学部から文学部の哲学科仏教学に転部した面白い経歴の方です。

100分de名著」って正月特番は興味深く見ましたが、
普段もやっていたんですね。たまにはテレビも観ないと・・。



「インドの仏」展の記事でブッダの最後のことばを引用したばかりですが、
『涅槃経』という経典全体はまだ読めていませんので興味津々なのですが、
既に1回目、2回目は終了後だったので3回目を見ました。
25分という適度な長さで見やすいですね。
テキストのほうはもう少し詳しく書かれています。

この回は、仏陀に死期が迫ったときの悪魔とのやりとりや
食中毒で亡くなる際のエピソードから
彼が自分の死によってなにを示したかが語られましたが
それ以前の話として印象に残ったのは、

◎原始仏教(小乗仏教)と大乗仏教の違い。
良くわかっているつもりでも簡潔に説明できないのですが、
佐々木氏は、<原始仏教>=自己鍛錬の宗教、<大乗仏教>=救済の宗教、
という表現で方向性の違いを強調します。わかりやすい。
(もちろん大乗を否定するものではありません)

◎在家信者と出家者との関係性。
「在家信者」はお布施という形で出家者を経済的に支え
その見返りとして、「出家者」は厳しい修行の姿を見せる、という構図。
佐々木氏は、出家者を科学の「研究者」に、
修行の姿を「研究成果」に置き換えて説明しましたが、
出家者=「アーティスト」、修行の姿=「作品」でもよいと思いました。
いずれにしろ、そうした世俗を離れた人たちの努力によって
世界が大きく進化を遂げるということ。

佐々木氏によると涅槃経は「組織論」である、とのことですが、
次回の放送とテキストで引き続き勉強したいと思います。

<タイポグラフィ作品の記事一覧>
 

空海が持ち帰った書体

6月3日の東京新聞に、空海が唐から持ち帰った書体の記事が載っていました。

面白い!



↓拡大してPhotoshopのレンズ補正機能でゆがみを補正しました。
右上の装飾性は東洋のものとは思われない。



<タイポグラフィ作品の記事一覧>

絵心経

仏教に興味あります、勉強中です、
ということを各所でアナウンスしていると、
時々参考になる品をいただくことがあります。ありがたい事です。

先日の路上ライブにもお越しいただいた
四国出身松戸在住の方から、興味深い手ぬぐいを頂戴しました。

調べたところ「絵心経」というらしいです。その昔、
漢字を読めない人向けに絵で般若心経の読みを説明したなごりなのでしょうか?
こういったユーモアのある仏教の伝え方、良いなあ・・。



写真は上と下だけで途中省略。

<タイポグラフィ作品の記事一覧>

「経典」と「可読性」のこと。

今回の個展では「理趣経」という密教経典を取り上げています。

きっかけになったのは
「必生 闘う仏教(佐々井秀嶺著/高山龍智編)集英社新書」に、
理趣経の十七清浄句が紹介されていて、人間味を感じる内容に惹かれたのです。
その後「理趣経(松長有慶著)中公文庫」を読んで、
さらに引き込まれてしまいました。

しかし本来密教の経典・真言・印などは
師から弟子へ面授(めんじゅ)によって伝えられるもの。

今回は幸運にも、真言宗智山派の僧侶・高橋照和氏、佐々木大樹氏、
お二人から簡単なレクチャーを受けることができました。
この経典が「仏の立場から悟りの世界を表現した経典」であること、
絶対平等の立場、など短い時間でしたが重要な部分を教示いただき、
その後の制作も必然的に変わってゆきました。

結果的に、今回モチーフにした十七清浄句のいくつかは、
単なる幾何形体にしか見えないほど、
可読性ぎりぎりに単純化・抽象化する方向に向かいました。

これは、自分も含めた初学者にとっての
「経典」の難しさを表現したことにもなりますが、
別な角度から考えると、
あらゆる経典を暗唱し完全に身につけてしまった高僧にとっては
「経典(=紙に定着された文字)」自体が必要なくなる、
ということにも繋がるかと思います。
つまり、バラバラに解体されて空中に消えてゆく途中経過としての
(幾何形体的な)文字表現・・。

展示に来ていただいた方々と、
可読性・非可読性についての話題も何度か出る中で
そのあたりが今後のテーマになりそうな予感を感じています。

日本仏教史

正月番組「たけしの教科書に載らない日本人の謎」で
伝来〜廃仏毀釈ぐらいまでのおおまかな日本仏教史をやっていました。

最近だと「日本の仏教(渡辺照宏)/岩波新書」など読みましたが
どちらかというと初期仏典から入った自分は、
意外と分かっていない部分が多いのです。

なにしろインドから中国経由で日本に伝わってきた仏教は、
空海、最澄、を始め各時代の宗祖達による多くの宗派と教義の違い、
ヒンドゥー教、神道、道教、修験道などとの関係、
など大変複雑なため、全体像をとらえるのはなかなか難しい。

上記番組は入門者向けで駆け足でしたし、
テレビですからなんらかの指南意図はあるにしろ、
概論をおさらいする良い機会でした。

伝来次点での治世のため(貴族のため)の仏教が
布教対象によって多様化していく様子。宗派同士の対立と終息。
江戸時代の寺請制度(檀家制度のもと)による寺の役所化・形骸化、
そしてその反動とも言える明治維新での廃仏毀釈へ・・。

優れた宗祖達によって日本の仏教が
オリジナルな進化を遂げたことは確かですが
全体としては、各時代の支配者の都合によって
仏教というものがもてあそばれ続けてきたような印象を受けました。

もう少し深く勉強したいポイントがいくつもありましたが、
とりあえず、以前買ってあった「神仏習合(義江彰夫)/岩波新書」を
ひもといています。廃仏毀釈のことももっと知りたいですね。
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