台湾小旅行(その1)

2015.07.30 Thursday

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    あっという間に時間が過ぎてしまいますが、先週の前半、3年ぶり二度目の台湾旅行をしてきました。

     
    二泊三日という慌ただしいスケジュールゆえ、あらかじめ決めた目的地は台北の国立故宮博物院のみ。
    まずは「典範と流伝ー范寛とその継承者たち」という企画展で、相方が熱望していた范寛の作品を鑑賞。有名な「渓山行旅図」や、同じ構図でひと回り小さい「行旅図」その他多くの作品を観ることが出来ました。中国の山水画は、自然と一体になる、悟りの境地、など宗教的な思想がバックボーンにあり、単なる自然描写ではありません。一つの画面に異なる視点からの描写を混在させるなど大変高度な技術を使うほか、髪の毛のような細い線による樹の葉などの細密描写や吸い込まれそうなグラデーションなどはやはり実物に接して初めて実感できる素晴らしさがありました。あと前述の「渓山行旅図」よりも、知名度の劣る「行旅図」のほうに魅力を感じたのも以外な収穫でした。
    今回は、展示後の忙しさのなかで旅行の準備や計画をする余裕がなかったので、期待感や高揚感のないまま飛行機に乗ったのですが、これらの素晴らしい絵画に接して行ってよかったと思いました。


    ここ数年、相方からの影響もあり日中の古い美術や書に注目してきましたが、やはり現代アートも見たかったので最終日の午前中は、台北市立美術館にて開催中の「李明維與他的關係」を観てきました。東京の森美術館との協同主催ということで、森美術館では昨年「リー・ミンウェイとその関係」として既に開催されました。日本では「参加型アート」としての側面がクローズアップされていたように記憶しますが、静かな環境で一点一点観てゆくと、東西の宗教や思想・文化の違いや豊富な美術史の知識を土台にした非常に強靭なコンセプトを感じることができました。展示スペースもゆとりのある素晴らしいもので、いい時間が過ごせました。

    P.S. 余談ですがこの展示の入場料は日本円でわずか¥120(=30元)。森美術館では¥1,500だったので10倍以上!
    民間と公立の違いはあれど、この違いは何なのでしょうか?



    <タイポグラフィ作品の記事一覧>

    憲法

    2015.06.22 Monday

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      公開制作のために週末を中心に、府中市に通っていますが、
      今回の新作は、日本国憲法をモチーフにしていることもあり
      移動中にはこんな本を読んでいます。
      戦後日本の出発点である現行の憲法を通して様々な問題が見えてきます。



      府中市美術館 公開制作64「タイポグラフィの実験室」

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      空海と密教美術展

      2011.09.10 Saturday

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        7月から東京国立博物館にて開催中の
        「空海と密教美術展」にやっと足を運ぶことができました。
        なかなか京都や奈良のお寺に参拝する機会が持てないので
        今回の展示は楽しみにしていました。

        仏像も魅力的なものはありましたが、
        文字への興味から、どうしても書のほうに目が向きます。
        空海の直筆はわずかでしたが、その分じっくり鑑賞しました。

        中でも空海が最澄に宛てた手紙「風信帖(ふうしんじょう)」は
        伸びやかな筆致の中に王羲之などの影響を感じる非常に芸術性の高い書。
        ガラス越しに至近距離で対面しながら、
        1200年近く前に行われた日本仏教史を代表する巨人同士のやりとりを想像する・・。
        とても贅沢な時間でした。

        ↓臨書用のテキストブックが売っていたので購入しました。


        「風信帖・灌頂記|空海」天来書院

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        微分音

        2009.02.22 Sunday

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          「アメリカ実験音楽は民族音楽だった(フィルムアート社)」
          という本があります。

          9人のアメリカ現代音楽の作曲家を取り上げていて、
          皆いろんな形で民族音楽に影響を受けている、という興味深い内容。
          ジョン・ケージとヘンリー・カウエル以外は
          名前も聞いたことがないのですが、話だけでも面白い。
          (レブエルタスというメキシコ人作曲家のCDは買いました。)

          読みかけでしばらく中断していたのですが、
          ハリー・パーチという作曲家の章を読み出したら
          今のご時世にとても合っていて、ちょっと元気づけられる話でした。

          前回の大恐慌時に、音律と楽器の研究のためイギリスに留学したものの
          アメリカに帰国したら職が無く、12年も肉体労働者生活をしていたという。
          しかしその間も研究心は衰えず、
          下層労働者の話し言葉を採譜したりして曲の素材をため、
          後に作品化していったそうです。

          しかしこういった作業をするのに、通常の12音階では大ざっぱすぎるわけで、
          半音のさらに半分(4分音)、1音の3分の1(3分音)など、
          「微分音」を使っているらしい。

          「微分音」というと、難しいようですが、自分の体験としては
          ブルース・ギターのチョーキングやスライド奏法もそうだし、
          三線を習ったときも感じましたが、民族音楽には12音階では割り切れない
          微妙な音程がたしかにありますね。

          ちなみに、エルメート・パスコアールというブラジルの音楽家が
          人のスピーチを採譜して楽器でなぞるように演奏していて
          ぶったまげたことがありますが、すでに先駆者がいたのですね。

          日本とブラジル

          2008.09.17 Wednesday

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            今年は「日本ブラジル交流年」ということらしいですが、
            「The Boom」「GANGA ZUMBA」のリーダー宮沢和史さんを中心としたイベント
            「10,000 SAMBA! 〜日伯移民100周年記念フェスタ〜」を観るために
            横浜赤レンガパークに行ってきました。

            自分にとって宮沢和史さんはいろいろな「きっかけ」を与えてくれるひと。
            「島唄」を始めて聴いたときも驚きましたが、その後、縁あって
            2000年〜2005年まで、The Boomのサポート・ギタリストとして
            一緒にお仕事をさせてもらう中で、様々な刺激と影響を受けました。
            この期間、自分は「琉球民謡」というきっかけから、
            アイヌ文化(&アイヌ音楽)→ブルース、レゲエ
            というように、辺境の音楽と文化について考える中で、
            音楽的キャパシティも広がっていきました。

            この日も「移民」について、自分が「日本人であること」について、
            あらためて考えるきっかけを受け取りました。
            例えば、自分は北海道出身ですが、祖先は明治維新後に
            新天地を求めて、四国から北海道に渡った人々です。
            ですから自分の祖先もまさに「移民」なのです。
            ※「静かな大地/池澤夏樹(朝日新聞社)」はまさにこうした人々の話です。

            コンサートの詳細は他のページにまかせるとして、
            なんといってもブラジルのスーパー・スター「ジルベルト・ジル」。
            彼のCDは7枚ほど持っているので、
            ブラジル音楽の中でもかなり聴いてきたほうです。
            一言で言えば「ミクスチャー」感覚が彼の最大の魅力ですが
            その背後に常に「アフリカ」の影が見えるところが好き。
            パーカッシブなギタープレイもすごくアフリカ的。
            この日の演奏は、誰でも楽しめるものでしたが、実験性も十分に発揮されており、
            66歳にしてまったく守りに入らないその姿勢には脱帽でした。
            「ブロードバンド」がテーマだという最新作をはやく手に入れたい。

            jil
            ステージ右手のスクリーンに映るジルベルト・ジルとランドマーク・タワー

            プラトンの「パイドン」

            2008.08.14 Thursday

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              ギリシャの偉大な哲学者「ソクラテス(BC469〜BC399)」は著作を残しませんでしたが、弟子の「プラトン」によってその思想が残されています。この本は、ソクラテスが死刑になる当日の朝から弟子との間で交わされた最後の対話(議論)を記録したもの。テーマは「魂の不死について」という興味深いものです。西洋にも「輪廻転生」の思想があったというのは驚きですが「ピュタゴラス派」の教義であったらしい。その「魂の不死」が「イデア論」を使って丁寧に証明されていくわけですが、死を前にしても恐れることなく真理を解き明かそうとするソクラテスの姿は感動的です。

              輪廻転生の思想に関しては、インドからギリシャに伝わったと考えるのが自然だと思いますが、ギリシャとインドの間でいつぐらいから文化的交流があったのかはちょっと調べたいところです。(ちなみにアレキサンダー大王の東方遠征はもっと後の話です。)

              最近(美大時代に挫折した)「哲学・思想」の世界にあらためて興味を持っています。美術史をおさらいしようとすると、どうしても必要になってくるのです。その時代を代表する「芸術」と「思想」とは硬貨の裏表のような関係ですから。この本は哲学書としてはかなり読みやすいほうだと思いますが、自分にとっては仏典や聖書などと同格と言っても良いほどの内容でした。ときおり読み直すことになりそうです。

              ソクラテスの死
              「ソクラテスの死」ジャック=ルイ・ダヴィッド作(1787)

              フランク・ロイド・ライト

              2008.07.22 Tuesday

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                20世紀を代表する建築家のひとり「フランク・ロイド・ライト(1867〜1959)」のドキュメンタリーDVD「フランク・ロイド・ライト/監督:ケン・バーンズ(ナウオンメディア)」を観た。すでに紹介した「ル・コルビュジェ」のDVDや最近観た「バウハウス・デッサウ展(東京芸大美術館)」などとあわせて、19世紀末から20世紀初頭の建築界の流れがぼんやりだが見えてきた。

                さてDVDですが、前半は広い空間を活かした郊外住宅設計で頭角を表し独自のスタイルを築き上げるまで。しかし多くの時間は、ほとんどロックスターのごとき放蕩生活ぶりの描写に費やされる。

                後半は「ル・コルビジュエ」「ミース・ファン・デル・ローエ」「ウォルター・グロピウス」らヨーロッパのモダニスト達に追い越され、過去の建築家になってしまったどん底の60歳代から奇跡的な復活〜精力的な活動〜92歳での死去まで。70歳手前で代表作「落水莊」を設計し第一線に復帰してからの活躍ぶりがすごい。しかも前述のモダニスト達にひけをとらない斬新さ・奇抜さを発揮。同じく晩年に開花したアーティストである「葛飾北斎」や「モンドリアン」を思い出したが、大変感動的で勇気づけけられるものでした。前半で強調された「人間的未熟さ」と晩年における「崇高」とも言えるほどの作品クオリティの対比が興味深い。極めて人間くさい感情の起伏の中で死ぬまで進化し続けた人。あっぱれです。

                ル・コルビュジェ DVD-BOX

                2008.07.10 Thursday

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                  DVD3巻セットの「ル・コルビュジェ」のドキュメンタリーを、TSUTAYAで一巻づつ借りてきてやっと見終わった。「モダニズム」という言葉の象徴とも言える「建築家」であり「画家」でもあった天才の仕事を一望に俯瞰できて満足。相当にスピリチュアルな人物だったこともわかったが、それらはインドでの大きなプロジェクトや、フランスでの教会の仕事などに特に表れている。基本的にインタビューに沿って構成されており、本人の肉声による解説が骨格になっているのがなにより魅力。そして全巻のイントロに毎回入っている言葉が良い。「私はたいした人間ではない。毎日愚かさから脱しようともがいている。」

                  ちなみにこのDVD、BGMも非常に面白かったのですが、クレジットによると「Bela Bartok」「George Gershwin」「Darius Milhaud」「Erik Satie」「Igor Stravinsky」などコルビュジェと近い世代の作曲家達の作品でした。ダリウス・ミヨーなどは知らないので今度チェックしたいです。後半の教会のシーンでは少し後の世代の現代音楽家「Olivier Messiaen」の曲が使われていた模様。メシアンは神学者としても有名でしたから妥当な選曲ですね。

                  The Soft Machine/Alive in Paris

                  2008.05.29 Thursday

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                     ソフトマシーンはライブ映像(DVD)も手に入れました。1970年、3rd発売後ぐらいの時期のパリでのコンサート。事故で車椅子生活になる前のロバート・ワイアットは初めて見ましたが、予想をはるかに超えるワイルドなドラミングに感動。ボーカルのアドリブ・シーンではディレイの使い方が「アンダーワールド」みたいな(ひょっとして元ネタか?)場面もあった。あと、前の観客が「ヘッドバンギング」しながら踊り狂っているのにもびっくり。この高度な音楽で踊るのか・・、「ハイアート」が売れる時代だったのですね。ジャズをイギリス人的に解釈した、知的で抑制の効いた演奏にはしびれます。
                     あと、これはフランスのテレビ番組で放映されたらしき素材なんですが、演奏はもちろんのことカメラワーク(&編集)が良い。半分近くのカットがステージ裏から録られている。ロバート・ワイアットの背後からです。円形の会場(シアター)なのでバックステージが広いんですね。残りの半分以上は横から。観客席側から録っているシーンはわずか。どアップからちょっと引きめのカットぐらいでうまく変化をつけている。バンドとしての存在感は音のほうにまかせて、画像のほうは優秀なプレーヤーひとりひとりの「孤独」を浮かび上がらせているように見える。なにか「ヌーベルバーグ」の流れを感じるセンスの良さに感心しました。

                    叩くロバート・ワイアット↓


                    歌うロバート・ワイアット↓

                    芸能山城組

                    2008.05.19 Monday

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                       昨年からちょっと気になっていた「芸能山城組」のCDをはじめて買いました。「シルクロード幻唱(ビクター)」というレコード2枚分をまとめた合唱曲集。日本の中世歌謡からインド、パキスタン、東欧などの独特な音階の民俗曲。チベット密教の声明やスーフィー(イスラム神秘主義)の祈祷など宗教的な音楽。後半の圧倒的なブルガリア女性合唱。など多彩。アマチュアとしては最高峰と言える高度な歌唱力と多様なレパートリーに感心すると同時に、それだけで終わらない深みを感じたのですが、その理由はライナーを読んだりHPを見て判明しました。
                       単なる芸能集団ではなく、西欧近代に対する「文明批判」を実践する実験集団であり、組頭の山城祥二氏は、科学者・大橋力(おおはしつとむ/本名)として大変な実績があるとのこと。自分の想像を超えたスケールでした。世界各地の民俗音楽の研究・演奏活動も、彼らにとっては伝統的共同体の叡智を現代に活かすための一手段なんですね。ワールド・ミュージックなどというセールス用の呼称も死語になった現在、一方ではこうした取り組みが地道に続けられていることに安堵感を覚えます。