台湾小旅行(その1)

あっという間に時間が過ぎてしまいますが、先週の前半、3年ぶり二度目の台湾旅行をしてきました。

 
二泊三日という慌ただしいスケジュールゆえ、あらかじめ決めた目的地は台北の国立故宮博物院のみ。
まずは「典範と流伝ー范寛とその継承者たち」という企画展で、相方が熱望していた范寛の作品を鑑賞。有名な「渓山行旅図」や、同じ構図でひと回り小さい「行旅図」その他多くの作品を観ることが出来ました。中国の山水画は、自然と一体になる、悟りの境地、など宗教的な思想がバックボーンにあり、単なる自然描写ではありません。一つの画面に異なる視点からの描写を混在させるなど大変高度な技術を使うほか、髪の毛のような細い線による樹の葉などの細密描写や吸い込まれそうなグラデーションなどはやはり実物に接して初めて実感できる素晴らしさがありました。あと前述の「渓山行旅図」よりも、知名度の劣る「行旅図」のほうに魅力を感じたのも以外な収穫でした。
今回は、展示後の忙しさのなかで旅行の準備や計画をする余裕がなかったので、期待感や高揚感のないまま飛行機に乗ったのですが、これらの素晴らしい絵画に接して行ってよかったと思いました。


ここ数年、相方からの影響もあり日中の古い美術や書に注目してきましたが、やはり現代アートも見たかったので最終日の午前中は、台北市立美術館にて開催中の「李明維與他的關係」を観てきました。東京の森美術館との協同主催ということで、森美術館では昨年「リー・ミンウェイとその関係」として既に開催されました。日本では「参加型アート」としての側面がクローズアップされていたように記憶しますが、静かな環境で一点一点観てゆくと、東西の宗教や思想・文化の違いや豊富な美術史の知識を土台にした非常に強靭なコンセプトを感じることができました。展示スペースもゆとりのある素晴らしいもので、いい時間が過ごせました。

P.S. 余談ですがこの展示の入場料は日本円でわずか¥120(=30元)。森美術館では¥1,500だったので10倍以上!
民間と公立の違いはあれど、この違いは何なのでしょうか?



<タイポグラフィ作品の記事一覧>

憲法

公開制作のために週末を中心に、府中市に通っていますが、
今回の新作は、日本国憲法をモチーフにしていることもあり
移動中にはこんな本を読んでいます。
戦後日本の出発点である現行の憲法を通して様々な問題が見えてきます。



府中市美術館 公開制作64「タイポグラフィの実験室」

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空海と密教美術展

7月から東京国立博物館にて開催中の
「空海と密教美術展」にやっと足を運ぶことができました。
なかなか京都や奈良のお寺に参拝する機会が持てないので
今回の展示は楽しみにしていました。

仏像も魅力的なものはありましたが、
文字への興味から、どうしても書のほうに目が向きます。
空海の直筆はわずかでしたが、その分じっくり鑑賞しました。

中でも空海が最澄に宛てた手紙「風信帖(ふうしんじょう)」は
伸びやかな筆致の中に王羲之などの影響を感じる非常に芸術性の高い書。
ガラス越しに至近距離で対面しながら、
1200年近く前に行われた日本仏教史を代表する巨人同士のやりとりを想像する・・。
とても贅沢な時間でした。

↓臨書用のテキストブックが売っていたので購入しました。


「風信帖・灌頂記|空海」天来書院

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